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野菜もの知り百科 トウガラシ(ナス科トウガラシ属)【JAコラム】

2020年09月24日コラム

土壌医●藤巻久志

ピーマンは英語でベルペッパーというようにペッパー(トウガラシ)の仲間で、辛味のない品種です。シシトウもシシトウガラシを短縮したもので、辛味の少ないトウガラシです。ピーマンもシシトウもトウガラシも学名は同じCapsicum annuumで、どれも白くてかわいい花を咲かせます。

属名のCapsicumは箱(種子が入っている部分が箱に似ている)を、種小名のannuumは1年生を意味します。トウガラシの辛味の主成分のカプサイシンは学名にちなみます。ピーマンはカプサイシンをほとんど含みません。シシトウは高温乾燥や肥料切れなどのストレスを受けるとカプサイシンが多く生成されることがあります。

シシトウをトウガラシの近くで栽培すると辛くなるというのは俗説です。カプサイシンは種子が付いている胎座(わた)に多く含まれています。シシトウの胎座は正常では甘く、たとえトウガラシの花粉が掛かっても辛くなることはありません。その交雑した種子を翌年栽培すると、トウガラシの遺伝子が半分入っているので、できた実の胎座は辛くなる可能性は高いです。

トウガラシ属は普通自家受粉です。トウガラシ属のめしべはおしべよりも長いので、柱頭に花粉が掛かるように花は下を向いて咲きます。野菜の花を趣味にしている人は、撮影のときに苦労します。

トウガラシは日本の七味、韓国のキムチ、中国の四川料理、イタリアのペペロンチーノなどに利用され、その辛さは世界各国の人々に愛用されています。

トウガラシの原産地は熱帯アメリカです。高価で貴重な香辛料のこしょうを探しに行ったコロンブスは、カリブ海のエスパニョーラ島でトウガラシを発見しました。欧州ではトウガラシをこしょうと同じペッパーと呼ぶようになりました。

ピンク・レディーのデビュー曲『ペッパー警部』のペッパーはこしょうかトウガラシかは不明です。

藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。

JA広報通信8月号より

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