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野菜もの知り百科 サフラン(アヤメ科クロッカス属)【JAコラム】

2020年10月27日コラム

土壌医●藤巻久志

植物は形や名前が似ていても、一方は食用になり健康に貢献し、他方は猛毒を含み食べると生死に関わることがあります。スイセンの葉をニラと間違えて食べてしまい、嘔吐(おうと)や下痢をする食中毒が毎年のように起こっています。

サフラン(アヤメ科クロッカス属)とイヌサフラン(コルチカム=イヌサフラン科イヌサフラン属)は名前も花形もよく似ています。サフランの雌しべはフランスの寄せ鍋ブイヤベースやスペインの炊き込みパエリアには不可欠で、血行改善や疲労回復などの効果があるといわれています。イヌサフランは全草に猛毒のコルヒチンを含んでいます。

サフランの原産地は中東で、日本には江戸時代に薬として伝わりました。明治時代に神奈川県大磯で栽培されるようになり、その後大分県竹田市に産地ができました。竹田市には瀧廉太郎の『荒城の月』のモデルになった岡城跡があります。

竹田市のサフランは秋に室内で開花させて雌しべを丁寧に摘み取ります。露地栽培で開花させて収穫した物と比べると衛生的です。竹田市産は雌しべが大きく、色鮮やかで香味も良く、品質が世界一といっても過言ではありません。

サフランは球根を土に植えると葉が先に出てから開花しますが、植えないでおくと花が咲いてから葉が出てきます。サフランの花は室内で水をまったくやらないで咲かせることができます。薄紫色の清楚(せいそ)な、ほんのり甘い香りのする花を楽しめ、赤い雌しべを取ることができます。花が咲き終わった株をプランターに植えておけば、翌年5月に分球で増えた新しい球根が取れます。

サフランの雌しべに含まれているクロシンは、アルツハイマーの改善向上に期待されています。子どものときに歌った曲も脳を活性化させます。団塊の世代が後期高齢者になります。サフラン料理を食べ、『荒城の月』を歌いましょう。

藤巻久志(ふじまきひさし) 種苗管理士、土壌医。種苗会社に勤務したキャリアを生かし、土作りに関して幅広くアドバイスを行う。

JA広報通信9月号より

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