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炊き込みご飯【JAコラム】

2021年11月21日コラム

伝承料理研究家●奥村彪生

現在の子どもや若者たちは、銀シャリよりもしょうゆ味を付けて白米にいろいろな具材をまぜて炊く、炊き込みご飯を好みます。お母さんにとっては具材を刻むのが少々邪魔くさいけれど、飯と具材に味が付いているから、おかずは一つ減る。お代わりをしてもらえば満腹感を覚えるし、後はあえ物かサラダとみそ汁を組めば、夕食はこれで十分。

しょうゆで直接味付けする炊き込みご飯が生まれたのは明治時代以後のことです。それ以前は丸ゆでにした鶏のゆで汁で飯を炊き、その飯の上に鶏の身をむしってのせ、薬味を添え、しょうゆ味を付けただし汁を掛けて食べていました。

魚も貝類も、切り身やむき身にして白米と一緒に炊きました。

日本各地には自慢の炊き込みご飯がありますが、私は大阪の「嘉薬(かやく)飯」が好きです。一般には「加役(薬)飯」と書きます。主役の白米に加える副材料を加役といいます。これがまた健康促進の役目をするので「嘉薬」としゃれたのです。鶏肉や油揚げ、こんにゃく、ニンジン、ゴボウ、干しシイタケなどを細かく刻んで白米の3割程度加え、煮干しのだしとしょうゆ、米1合に大さじ1とみりん小さじ1で味付けします。私は煮干し粉を紙パックに入れ、水と一緒に仕掛けて炊きます。

30年ほど前、この嘉薬飯をアラブのクウェートで作りました。こんにゃくやゴボウ、油揚げはないので、鶏肉とマッシュルームとニンジン、ピーマンをどっさり入れ、頭をひねって、油揚げの代わりにごま油をたっぷり加え、しょうゆ、こしょうで味を付けて電気釜で炊いたら、クウェートのマダムたちに大人気。おいしくてヘルシーなジャパニーズプラオ(ピラフ)とはしゃいで、喜々として食べていました。しょうゆのうま味とロースト臭が彼女らの心をつかんだのです。実はごま油を入れて炊く油飯(あぶらいい)は、飛鳥時代に中東からわが国に伝えられていたのです。世界に発信を。

JA広報通信10月号より

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